「相続放棄」の勘違いを解消!不動産相続登記で知っておくべき法的な違い。
「相続放棄」の勘違いを解消!不動産相続登記で知っておくべき法的な違い。
相続というと、多くの方が「放棄する」という言葉を耳にすることがあります。しかし、この言葉が日常会話で使われる場合と、法的な文脈で使われる場合では、意味に大きな違いがあります。一見同じように聞こえる「相続を放棄する」という表現ですが、不動産相続登記の現場で使われると、予想外の問題を引き起こすことがあります。本記事では、そうした誤解を避けるために、日常会話での「放棄」と法律用語としての「相続放棄」との違いを明確にし、それぞれが相続登記においてどのように扱われるべきかを解説します。
相続が起こった時に、遺言書がない場合、民法で定められた相続人(法定相続人)と民法で定められた持ち分(法定相続分)で、不動産を取得することとし、その通りに登記申請をすることができます。しかし、大抵の場合、相続人の皆さんでお話合いをして、どなたか一人が相続します。
例えば、父、母、子供2人の4人家族があるとしましょう。父と母が住んでいる自宅の不動産が父所有で父名義の登記が入っています。この場合に、父が亡くなりました。民法通りですと、この自宅は、母が2分の1、子供が4分の1ずつの共有で相続することになります。しかし、大抵の場合、「母がずっと住んでいるのだから、母の名義にしていい、私たちは放棄するから」と、子供たちは言います。これが、「遺産分割協議」をして、母が自宅の不動産を取得することに決めたということになります。この場合の、子供たちの言う「放棄する」という意味は、あくまでも「遺産分割協議」の中で、自分の持ち分は放棄して、母がすべて取得するように取り決めをしたということです。
これは、「相続放棄」とは違います。相続放棄というのは、被相続人の死亡を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に申立てを行わなければならないもので、この申立てが受理されると、相続放棄した方は法的に相続人ではなかったことになります。相続放棄は、亡くなった方の財産が借金などでマイナスである場合や、相続することでトラブルが予想される場合などに行われることが一般的です。
相続登記において、相続放棄した方がいる場合は、相続放棄申述受理通知書もしくは相続放棄申述受理証明書を添付して登記申請をします。しかし、遺産分割協議で、取得する人を決めた場合は、遺産分割協議書に実印を押印し、印鑑証明書を付けて、登記申請をします。
遺産分割協議をして自分の相続分を放棄することと、家庭裁判所に申立てをして、相続放棄することでは、意味が大きく違います。相続放棄をすると、そもそも相続人ではなかったことになります。相続登記申請の際には、添付する書類もそれぞれの場合で異なってきますので、注意しましょう。