遺贈とは?
遺贈は相続と非常に似ています。相続は人の死亡によって財産の承継がなされますが、遺贈も人の死亡によって財産の承継がなされます。ただ、遺贈の場合は、亡くなった方の生前に残した遺言にしたがって、財産の承継がなされます。相続では、財産を受け取る人は、法定相続人に限定されますが、遺贈では、財産を受け取る人は、誰でもよく、人だけでなく、施設や学校等の法人でも可能です。もしかしたら、遺贈寄付という言葉を聞いたことがあるかもしれません。自分が亡くなった後、どこか特定の団体に自分の財産を遺贈寄付したいと思ったら、生前に遺言でその旨を残しておきます。そして、遺言執行者を指定しておくことで、その特定の団体が、相続財産を受け取ることができます。
遺贈による登記は、相続による登記より少し複雑になります。まず、登記を申請する際には、原則、財産を受け取る人(「受遺者」と言います。)と相続人全員で登記を申請します。つまり、受遺者は、相続人の協力を得て登記を申請することになります。しかし、遺言執行者が選任されている場合は、受遺者とその遺言執行者で登記を申請することができます。もし、受遺者がそもそも相続人である場合は、相続登記を申請する時と同じような手続きと考えればいいでしょう。よって、受遺者が相続人以外の場合の遺贈の登記においては、相続人全員の協力を得るか、もしくは、遺言執行者と共同で申請することになります。
また、必要書類も遺贈の登記においては、相続の登記よりも増えます。特徴的なのは、遺贈の登記の場合は、権利証にあたる、登記識別情報もしくは登記済証、及び印鑑証明書が必要になることです。よって遺贈をしようと考えて遺言を残す際には、登記識別情報もしくは登記済証も受遺者に無事に引き渡せるようにしておくのが望ましいでしょう。また、遺言執行者を遺言書にて指定しておくことも重要なポイントとなります。なぜなら、遺言執行者が選任されていない場合は、相続人全員に印鑑証明書を準備してもらわなければなりません。もちろん受遺者は家庭裁判所に遺言執行者の選任の申立てができるものの、時間もかかりますし、その申立ては受遺者にとって負担となり得ます。
なお、登録免許税に関しては、遺贈の登記のほうが、相続登記より高くなります。相続登記は、固定資産税評価額の0.4%ですが、遺贈の登記の場合は、2%となります。ただ、受遺者が相続人である場合は、相続登記と同じ0.4%になります。
2024年4月より、相続登記の義務化が始まったことはご存じでしょう。実は、遺言によって不動産を取得したことを知った場合も、登記の申請義務があるのです。つまり、遺贈により不動産を取得したことを知った場合は、知った日から3年以内に、遺贈による登記をしなければならないことに、留意しましょう。